【労災】労災不支給決定が再審査請求で取り消された事例

1 Oさんについて

 Oさんは、昭和56年4月から平成13年5月までの期間中、12年3か月間(労基署の推計による)、とび職や解体工として建設現場で労働し、石綿ばく露作業に従事していた労働者です。

 Oさんは、平成25年7月、肺がんと診断され、その後、入退院を繰り返しながら療養を続けています。Oさんは、平成26年3月に労災による休業補償の請求を行いましたが、不支給となりました。不支給の理由は、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が5000本に満たない3501本であるため、石綿ばく露作業によって肺がんが発症したとは認められないとしたものでした。

2 Oさんの事案の問題点

 Oさんの事案で最大の問題となったのは、胸膜プラークが認められず、しかも乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が5000本に満たなかった点です。厚生労働省が取りまとめた『石綿による疾病の認定基準に関する検討会』の報告によると、乾燥肺1グラム中の石綿小体の本数が1000本以上あれば、職業ばく露が疑われるレベルとされています。Oさんの石綿ばく露作業歴は12年3か月もあり、職業ばく露以外の原因はおよそ考えられなかったにもかかわらず、5000本に満たないから、という理由で労災申請は却下されました。Oさんは直ちに審査請求を申し立てましたが、ほぼ同じ理由で審査請求も認められませんでした。

3 逆転のポイント

 再審査請求を申し立てた後で、Oさんが肺がんで手術した際のビデオを入手することができ、専門医に診ていただいたところ薄いプラークが見つかりました。これにより、平成28年6月15日、Oさんに対する不支給決定が取り消されるという逆転裁決を勝ち取ることができました。

 労災が不支給となったとしても、このように逆転できる場合も少なくありません。不当な対応にもあきらめず、是非ご相談ください!

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