すでにお知らせしました通り、2024年2月に北海道建設アスベスト訴訟第1陣訴訟について、最高裁決定がなされ、多くの原告らの勝訴が確定しました。企業相手に勝利が確定するまで、実に13年もの時間が必要でした。本記事は、改めて原告の皆様と当弁護団の歩んできた歴史を振り返り、我々の闘いの経緯と、今後の抱負について、お伝えするものです。
1 提訴
全国の建設アスベスト訴訟のはじまりは、2008年5月の東京地裁への提訴です。北海道では、2011年4月に第1陣訴訟を提起しました。
2 第1審判決
全国で初めての判決は、2012年5月の神奈川1陣横浜地裁判決でしたが、残念ながら、この神奈川1陣横浜地裁判決では、国の責任も、企業の責任も認められませんでした。
しかし、同年12月の東京1陣東京地裁判決では、企業への責任は認められませんでしたが、国の責任を初めて認めました。以降、福岡地裁、大阪地裁、京都地裁と、国の責任は続けて認められました。京都地裁では、企業に対する責任も初めて認められました。
北海道第1陣訴訟の第1審判決は、2017年2月に言い渡されました。国の責任は認められましたが、残念ながら、企業の責任は認められませんでした。そこで、企業責任を認めることと、国の責任の範囲を広げるため、控訴することにしました。
3 2021年最高裁判決と給付金法
2017年以降、国の責任だけでなく、企業責任を認める判決が、各地の地裁、高裁で積み上がっていきました。このような裁判例の蓄積を受けて、2021年5月、最高裁は、国及びアスベスト建材製造企業の責任を確定させる判決を言い渡しました。企業責任を認めさせるためのハードルの一つとなっていたのが、当該企業の建材の粉じんがその被災者に到達していたかどうかという点を証明することにあったのですが、各地の地裁、高裁が判断してきた、シェアを用いた確率計算を考慮した建材現場到達事実の立証という方法について、最高裁も合理性があると判示し、この方法が是認されることとなりました。
4 国との和解
この2021年最高裁判決を受けて、2021年6月に成立したいわゆる「建設アスベスト給付金法」により、国が、損害賠償金の一部を給付することになりました。これにより、国との関係では、国が建設アスベスト給付金法で定めた給付金を被害者に支払うことで解決するスキームが確立しました。
北海道第1陣では、2021年及び2022年に、建設アスベスト給付金法とほぼ同内容の水準で、国との間で和解が成立し、国との関係では完全に解決することになりました。
5 控訴審判決
残るは、企業の責任です。2022年5月、北海道第1陣訴訟の控訴審判決が言い渡されました。2021年最高裁判決の流れを受けて、企業責任を認める内容の判決となりました。もっとも、救済範囲が十分ではない点があると判断したため、最高裁に上告することにしました。
6 最高裁判決
2024年2月、最高裁は、北海道第1陣訴訟について、残念ながら、上告を棄却する判断をしました。これにより、2022年5月に言い渡された控訴審判決が確定することになりました。上告が認められなかったことは残念ですが、企業責任が認められた控訴審判決が確定しましたので、実質的には企業に対する勝訴判決と評価できるものでした。
7 第1陣の到達点と限界
このように、北海道建設アスベスト訴訟第1陣は、約13年もの長い闘いを経て、国と企業の責任を認めさせる判決を勝ち取ることができました。他方で、最高裁は、屋外作業従事者に対する責任は国、企業ともに認めず、救済の対象外としました。また、企業の責任については、解体作業についての責任を認めず、これも救済の対象外としました。よって、アスベスト被災者の全員救済という観点では、未だ道半ばと言わざるを得ません。
8 さらなる被災者のみなさんの救済へ
アスベスト被災者の方の労災決定数は、未だ減少するきざしがみられません。今後も新たなアスベスト被災者の方が現れてくる可能性は高いと思われます。今後も、北海道建設アスベスト訴訟第1陣の到達点を踏まえ、アスベスト被災者のみなさんの救済を実現するよう、活動を続けていきたいと思います。
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