【建設アスベスト給付金】給付金の減額分を訴訟で勝ち取ることができました!

 令和7年3月11日、釧路地裁において、建設アスベスト給付金の期間減額分に関して、期間減額を受けなかった給付金額との差額を国が支払うとの和解が成立しました。

 本件原告であったXさんは、内装工として釧路市内で働き、アスベスト粉じんにばく露して肺がんとなってしまった方です。労災の請求や、給付金の請求は組合の援助を受けながらご自身でなされましたが、給付金の請求にあたっては、ご自身が申請されていた一部の職歴が認められず、4年8カ月しか就労していないという取り扱いとなってしまいました。この結果、就労期間が足りないとして給付金が1割減額されてしまいました。

 しかしながら、Xさんは、一人親方として長期間働いていたので、実際の就労期間が期間減額の対象となる10年間以下であることはありえない状況でした。このため、国が認めてくれなかった期間も就労していたことを前提に、期間減額を受けない給付金額との差額を請求することについて、当弁護団にご相談いただきました。当弁護団ではこの差額について、国家賠償請求訴訟の形で請求をすることとしました。これらの検討に基づき、令和5年7月18日、Xさんは国を被告として釧路地裁に提訴しました。

 訴訟において国は、Xさんが一人親方として働いていたことが確認できる客観的資料がないため、就労していたとは認められないという対応でした。このため、最終的には、Xさんが一人親方として働いていたかどうかを裁判所に確定してもらうしかないということになり、Xさん自身の本人尋問を行いました。Xさんの証言を確認した釧路地方裁判所は、Xさんが10年以上働いていたと認められるとの心証を示しました。この心証を前提に、国は最終的に期間減額を受けない給付金額との差額を支払うとの決断を行い、令和7年3月11日の期日において、Xさんと国との間で和解が成立しました
 これは、Xさんの請求が認められたものであり、勝訴的な和解であるといえます。

 現在の国の制度では、建設アスベスト給付金の支給額の決定において、事前の手続として情報提供サービスが利用されています。しかし、情報提供サービスでは、労災手続の記録を前提として判断がなされますので、雇用されていない一人親方の時期については、労災保険の適用と関係がなく、情報提供サービスの判断において確認される資料に一切記載がないことも珍しくありません。このため、情報提供サービスの結果を前提として給付金の請求を行うと、本来の就労期間より短い就労期間であったとされて給付金額が減額されることがあります。

 今回の和解のように、期間減額については、損害賠償請求訴訟を提起することにより、減額分について支給を受けられることがあります。ご自身で給付金請求をした場合であっても、減額されてしまったなどのご事情がありましたら、ぜひ、一度当弁護団までご相談ください。

コメント