医師尋問を終えて
弁護士 多田 絵理子
平成25年10月8日,細川医師の証人尋問を実施しましたが,その際,原告らの個別症例について,尋問を担当させていただきました。実際に細川医師の証人尋問を傍聴された方はお分かりかと思われますが,細川医師はアスベスト問題に非常に関心をもっておられ,今回の尋問のために,お忙しい中何度も打ち合わせに参加していただきました。
その打ち合わせの中で,特に印象に残っていることは,細川医師がアスベスト関連疾患に関心を持たれた出来事とあるべきじん肺対策についての2点です。
1点目の細川医師がアスベスト関連疾患に関心を持たれた出来事についてですが,細川医師は他院から紹介された29歳の中皮腫患者の治療を担当し,中皮腫がいかに難治性の病気であることを思い知らされたと話されました。そして,細川医師は,患者の母親の「何とか助けてほしい」という悲痛な声と,患者自身が「お母さん,俺はもう頑張れない,もういいだろう」と言って治療を中止したことが今も忘れられないと話されました。
若くして人生を終えることになった患者の無念さや親族の悲しみを感じ,アスベストの被害の重大性を感じる出来事であったと感じました。
次に,2点目のあるべきじん肺対策についてですが,呼吸器科の医師の中に,アスベストに精通した医師が少ないため,がん専門の病院で治療を受けていても,呼吸器科医は診断や治療に専念しがちであり,職歴等の確認や労災申請に時間を避けない現状があること,さらに,事務職員も労災病院を除き労災に精通した人員が配置されているわけではないこと,当然に患者やその家族にも労災医療の知識がないため,医療機関からの説明がなければそのまま放置されることになるといわざるを得ない事例がみられると話されていました。
また,アスベスト関連疾患においても早期に疾患を発見できれば効果的な治療を行うことができるため,早期発見のためには定期健診が極めて重要であり,特に石綿曝露歴を有する労働者に対しては健診実現のための諸環境の整備が必須といえ,具体的には現役の労働者においては,雇用者に定期健診を義務付けることや退職時に労働者に対して定期健診を継続するよう告知することを義務付けること,また,退職者においては,一定の石綿曝露歴を有する者は石綿健康管理手帳を取得でき,この手帳の所持者は指定病院で無料の定期健診を受けることができることから,行政においてこのような制度及び定期健診の受診を広く周知することが必要であること,さらに,現時点では石綿健康管理手帳の所持者が健康診断を受けることのできる指定医療機関が少ないことから,今後は指定医療機関の拡充も必要である,と話されていました。
アスベスト関連疾患の患者は今後増加すると予想され,アスベスト曝露歴を有する労働者の健康管理を行える環境の整備が急務であると感じました。

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