息が出来ないということ
弁護士 中村 憲昭
「空気みたいな存在」という言葉があります。存在感のないことを示す比喩的表現ですが、その言葉に反して、空気、特に酸素は、人間にとって必要不可欠の存在です。
皆さんは「呼吸が出来ない」ということを想像したことがありますか。
溺れたことのある人はともかくとして、おそらく、普段意識して呼吸している人は(ヨガなどを嗜まれている方は別として)ほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。
アスベストによるじん肺は、簡単にいえば、肺が石のように硬くなって呼吸できなくなる病気です。
肺がんは皆さんもご存じのとおりでしょう。悪性中皮腫もがんの一種です。
腫瘍が出来ると、手術でがんの部位を切らなければなりません。当然、その分呼吸は苦しくなります。
私も、幼いころから喘息を患ってきました。季節の変わり目や低気圧が近づいて来ると、発作が出て呼吸が苦しくなります。息を吐きたくても吐けない感じで、少し歩くと動けなくなります。
アスベスト疾患にかかっている患者さんたちも、日常的に呼吸困難に苦しんでいます。
彼らが病気で苦しんでいるのは、アスベストを含有する建材から発生する粉じんのためです。
その粉じんは、マスクでも完全に防ぐことが出来ません。アスベスト建材をメーカーが作り続けたせいで、そして国がアスベストを規制しなかったせいで、彼らのような被害者が発生し続けたのです。
彼らの病気の進行を止めることは、今の医学では出来ないことです。お金をもらっても、彼らの苦しみは和らぐことはありませんが、せめて国や企業に責任を認めさせたい、そういう気持ちで闘っているのがこの訴訟なのです。

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